2008年12月7日日曜日

拙く淡い記憶-回想愚憚-其の壱

私が中学生の頃、新宿に超高層ビルが立ち並びはじめた。副都心などと呼ばれていた。
まだ2、3本しか超高層ビルが建っていない時分の話である。

京王線で新宿まで行き、たびたび映画を観たり、路地を探索したり、学校の指定ジャージ姿で頻繁に大都会を徘徊していた。

あるとき、友人と超高層ビルに登ってみるとしょうと意気投合。
しかしながら、その場所が大人たちの場所であることを十分、理解していた私たちは簡単に登れるとは考えていなかった。周到な計画と固い意志が必要であると話し合った。

計画はこうだ。
正面エントランスから入るのは御法度。エレベータなど以ての外。
となれば、裏口&非常階段しかあるまい。ターゲットはスミトモとかミツイとかの超ど級のビルディングである。最上階までフロア50以上はあるのか、はたして登頂できるのだろうか。

計画の実行に迷いは禁物だ。
ふたりの脚は、即座にターゲットに向いた。

ここから最上階の赤い絨毯に至るまでの、長い一日がはじまるのであった。